夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 今の仕事が好き。
 もう、それしか残ってなかった。


 嫌がる体を引きずって、毎日会社に行った。


『小松ー、飲みに行くか?』
『………。……っ』
 

 パクパクと小さく口を動かすと、口からは吐息が出る。


 ごめん。無理。



 しばらく繰り返しても、その音が息に乗ることはなかった。

 早く返事しろと急かされて、ようやく首を横に振る。



 ……上手く、声が出せない。

 
「それであたし、会社で声が出せなくなっちゃってね」
「ミサキさん……」


 あたしの話を聞きながら、夕芽ちゃんは悲しげに眉を寄せる。


 いつの間にか、彼女の手元には大きな暗闇が出来ていた。

 よく目を凝らせば、それが墨文字がびっしりと書き込まれた和紙だと分かった。



 最後に一文、筆をすらすらと滑らせて。


 紙を片手に夕芽ちゃんは立ち上がる。


「これから、お晴らいを行います」