夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

「はい」


 空っぽの硯に、夕芽ちゃんが筆先を落とす。

 と、墨汁に浸したみたいに、白い毛は真っ黒に染まる。


 そして、流れるような手つきで、紙の上に筆で文字が書かれていく。
 

「だから、たくさん、話しかけたのっ! 聞かれたことにも全部答えたし、仕事も細かく教えた…」

 
 自分の失敗談を話したり、飲み会にも積極的に参加したり。



 苦手なお酒を飲んだ。

 料理を喉の奧に流し込んで、上司の自慢話に相槌を打った。


 嫌いなビールを飲んだ。

 ふざけ始めた男性社員たちに、声を立てて笑った。


 強いお酒を飲んだ。

 視界がぐるぐるとして、誰かの助けで家まで着いた。




 みんなと仲良くなれてる。


 ……そう、思ってた。