夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー



 ひとつの単語では、とてもじゃないけど伝わらないようなモヤモヤ。


 それが、夕芽ちゃんの言葉によって少し形が見えてきたような気がする。


 
 …この子はどうして、こんなに器用なんだろう。
 あたしが言葉に変換できずにいたことを、簡単に言えるんだろう。



 それは、夢宮だからか。
 はたまた、多才そうな夕芽ちゃんだからか。


「少し、話してみてくれませんか?」


 あたしにその言葉を向けて、夕芽ちゃんは紙と筆と硯を木箱の中から取り出した。


 
 深海のように、底の見えない瞳があたしに甘く囁く。

 
 ひとつ残らず話してって。


 
 あたしが抱えるモヤモヤも、きっと、夕芽ちゃんが全部受け止めてくれる。


 
 ……楽に、なれるのかな。
 忘れられるのかな。



 自分よりも年下の女の子に、あたしの暗い感情を背負わせようとするなんて。
 社会人失格だよ、あたし。



 でも、わずかな差で、この苦しみから解放されたいという気持ちが勝ってしまった。


「あ、あたし…そ、その……」