夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 ねえ、湊先輩。

 
「いつか、兄さんの冤罪が晴れたら、なんですけど」


 約束して。

 
「そうしたら私のこと、夢乃って呼んでください」


 もう、その名前では呼んでもらってはいるけれど。


 本当の意味で私が夢乃を名乗れるようになるには、まだ遠いから。


 
 それまで、側にいて欲しい。

 その先も、側にいて欲しい。


 どうか居なくならないで。

 
「……分かった。約束する」


 私の目元を湊先輩の親指がそっと拭って、初めて泣いていたことに気づく。

 
 自分でも同じ場所に触れると、晴らってもいないのに、なぜか悪夢の味がした。

 

 指先が感じたその涙の味は、今までとはどこか違う。

 

 
 ほんのりと甘くて──、だけど、少しだけ苦かった。