夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 大企業の子会社で起きた、横領事件。

 殺人もあったみたいで、世間の注目を集めていたものだったみたいだ。




 その犯人として捕まったのが、兄さんだって。


 私の、自慢の兄さん。


 

 ひたむきで、先生たちからの信頼も厚くて。

 まだ幼い妹と支え合って生きていて。

 バイト漬けでも、課題はちゃんと提出して。



 兄さんが学生時代に築いた評価は、一瞬にして崩れ去った。

 おばさんの家で見せてもらったテレビ番組では、中学だとか高校だとかの知り合いが、みんな口を揃えて言った。
 

『まさかアイツが…って感じですね』


 私もそう思う。

 

 だって嘘だ。


 兄さんが、こんなことするはずない。

 

 
 上背も筋肉もあるのに、喧嘩に巻き込まれたら、必ず怪我をして帰ってきた兄さんだ。

 
 本の中でメインキャラが死ぬと、夜中にこっそり泣いていた兄さんだ。


 私の頭を撫でて、顔をくしゃくしゃにして笑う兄さんだ。




 なのに、人殺しなんか出来るはずがない。