夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

「うん。俺が夕芽のこと紹介したからね」
「そうだったんですか」 

 
 渡辺さんは、兄さんの友達の弟。

 そして、湊先輩の知り合い。



 面白いくらいの偶然だ。

 
 思ったより、世界は狭いのかもしれなくて。



 夕芽()の知り合いにも、もしかしたら夢乃()を知る人はいたのだろうか。

 ……気づいて欲しくないな。


 その人の中で、2人が違う人物に見えていたらいいのに。


 
 そうじゃなきゃ、救われない。



 夢乃として生きてきた私を、仕舞い込んだ意味がなくなってしまう。


「ごめん、俺が話遮ったよね」
「いえ」
「君が夕芽になったのは、結女(夢宮)だから?」  
「……よくご存じですね」 


 普通の日だったと思う。


 
 いつも通り、朝早く出て行く兄さんを眠たい目で見送って。

 学校の休み時間には、瑠奈と話して。

 家に帰ってくると、やっぱり誰もいなくて。

 

 
 兄さんの炒飯が食べたいな。


 そう思って、久しぶりにご飯を食べずに待っていた。