夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー


 私に、話せと?
 

 湊先輩はきっと、その先の言葉にたどり着いているのに?



 その目的が分からない。


 私が苦しいだけ。

 それ以外には、何もない。

 
「教えて欲しい」
「嫌です」
 

 だから嫌だ。

 

 私が話すことの意味を見出せないから。



 本当は何も知られたくない。 

 でも、好きに調べればいい。

 
「湊先輩には分からないですよ」
「そうだね。…俺は、何も分かれないと思う」


 知ったところで、何も変わらない。



 ただ可哀想だねって。

 不幸だったねって。


 ひどいご家庭だねって。



 そんな目で見られるくらいなら、可愛がられるだけの女の子がいい。


 悩みなんてなさそうな顔で笑っていたい。

 
「だから……」
「でも、どこまでが真実なのか分からなかった」


 そんな私の言葉を、湊先輩は遮る。


 少し迷うような仕草を見せた後に、一歩距離が縮まる。

 私の方から、遠ざかることはしなかった。

 

 冷えた手の平に、湊先輩の熱がじんわりと溶けていく。

 ……温かい。
 


 兄さんの、手みたいだ。