夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー

 やっぱり水はひんやりとしてて冷たい。
 

 変な味も匂いもしないから、湧きたての水みたい。すごく飲みやすい。



 ごくごくと飲み干して、お茶碗を下ろす。
 

 向こうに置かれたままの赤いお茶碗の中の液体は、真っ黒なものへと変わっていた。
 

 
 いつの間にかやかんの近くに戻っていた夢乃ちゃんが、迷わずそれを手に取った。


「……夢乃ちゃん?」


 怖くなって、思わず声をかけた。


 だって、明らかにわたしが飲んだものと違う。



 同じやかんのお湯なのに。

 似たようなお茶碗に注がれていたのに。


 わたしが水色の方に口をつけるまでは、赤い方も透明のお湯だったのに。

 
「それ、なんで…黒いの?」
「そういう仕組みなの」
 

 夢乃ちゃんはそう断言して、お茶碗を傾ける。

 何のためらいもなかった…。


 どろどろで、真っ黒で、重くて、熱い液体が、夢乃ちゃんの口に入っていく。