夢宮 ーある少女の悪夢晴祓録ー



 ママが描いてくれた地図を、くしゃりと握り潰す。


 わたし、もう子供じゃない。

 こんなもの渡されなくたって、自分で行けるから。



 代わりに、スマホの電源を入れて、画面の中にいる地図を何度も回す。


 
 ママだって、今日のわたしの目的地は行ったことがない。


 だから、手描きの地図も、所詮はスマホの丸写しだ。



 それなら最初からスマホでいいよ。


 ……でも、まぁ心配か。



 わたしが自分から遠くへ出かけたがるなんて、珍しいことだから。

 
「ここ、かな…」


 だけど近場なら、ママのいない時に遊びに行くから、地図は読める。


 家族の中では方向音痴もマシな方じゃないかな。



 ちょうどそのタイミングで、巫女さんがほうきを持って鳥居から出てきた。


 わたしの姿もバッチリ見えてるだろうし、逃げ場はない。

 
 

 …あ、あい、あい…、あいさつ。


 挨拶、しなきゃ、かな。 



 心の準備ができていなくて慌てていると、巫女さんと目が合った。


「参拝され…」


 カツン。

 ほうきが、地面に落ちる。


 “こういう時は拾ってあげるのよ、瑠奈”

 分かってる、ママ。

 でもそれどころじゃない。

 

 体が聞いてくれない。

 
「…………瑠奈?」