Good day ! 6

二人でモニターを見ながらブリーフィングを始める。

舞のきちんとした事前準備と的確な情報の伝え方に、大翔は感心した。

(若いのに、しっかりしてる)

そう思い、復路でのPF (Pilot Flying) を任せることにした。

並んでシップに向かいながら、大翔はなにを話そうかと思案する。

(お父さんと間違えたってことは、きっとこの子もまだ若いんだろうな。今どきの日本の女の子との会話なんて、全く想像つかない)

そんなことを考えていると、隣で小さく、すみませんと声がした。

「ん? どうした」

歩きながら舞を見ると、うつむいたまま話し出す。

「あの、やはり怒っていらっしゃいますよね? 父親と間違えるなんて、本当にすみませんでした」
「いや、もういいから」
「相澤キャプテンと父では、年齢もうんと離れています。それなのに間違えるなんて、大変失礼しました」
「本当にもう大丈夫だから。そうではなくて……。実は日本のことが分からず、なにを話せばいいのか戸惑っているんだ」
「そうなのですか?」

不思議そうに舞が顔を上げる。

「ああ。日本って今、ハラスメントに敏感なんだろう? 敬語や丁寧語を使わないとパワハラになるし、女性と気軽に話したらセクハラで訴えられたり」
「ええ!?」
「君のことだって、なんて呼べばいいのか。アメリカだとファーストネームだけど、日本は違うよな? あ、君って言ってもいいのか? あなた、とか?」

舞は目をしばたたかせて言葉に詰まった。

「ごめん、やっぱり違ったか?」

不安になって尋ねると、舞は慌てて否定する。

「いえ、そんな。全然気にしません。なんでも大丈夫です」
「そういう訳にいかないだろう? この際だからちゃんと教えてほしい。これからも女性パイロットと一緒に乗務することがあるだろうから」
「なるほど、そうですね」
「じゃあ君のことは、佐倉さんと呼べばいいか? それとも、佐倉副操縦士?」

真顔で尋ねると、舞も真剣な表情で考え込んだ。

「えっと、社内で佐倉さんと呼ばれたら、私以外に三人返事をする人がいます。佐倉副操縦士も、あと一人」

は?と、大翔は面食らう。

どういう意味の日本語だ?と首をひねった時、搭乗ゲートに到着した。

舞はくるりと向きを変えると、ベンチに座っている数少ない乗客に深々と一礼する。

(日本の礼儀作法か、見習わないと)

大翔も舞に続いてお辞儀をしてから、シップに乗り込んだ。