◇
「佐倉さん」
「は、い!?」
会議室へ向かう途中、呼ばれて振り返った舞は、能面のように無表情のまま足早に近づいてくる大翔に、思わず後ずさる。
今日はこれから野中部長やディスパッチャーも交えて、初日の出フライトの飛行ルートについて説明を受けることになっていた。
たくさんの資料を胸に抱えていた舞は、大翔の様子に顔をこわばらせる。
「お、お疲れ様です、相澤キャプテン。あの、どうかなさいましたか?」
「話があるんだ。とにかく入ろう」
「は、はい」
舞は、ヒクッと笑顔を引きつらせながら頷く。
並んで席に着くと、大翔が舞の方に身体の向きを変えた。
「君、俺に嘘をついたね? 君の話は信用出来ない」
「ま、まさかそんな! 一緒に空を飛ぶパイロットですから、キャプテンには信用していただかなければと思っております」
「じゃあこれから質問するけど、絶対に嘘はつかない?」
「はい、約束します」
舞はゴクリと喉を鳴らして姿勢を正した。
「この間、もう一人の佐倉コーパイと一緒に飛んだよ。佐倉教官にそっくりで、背が高くてかっこいい青年だった。彼は?」
「あ、は、はい。双子の兄です」
「双子!?」
大翔は目を見開いたあと、視線を落としてため息をつく。
「何回驚かされるんだよ、まったく……」
気を取り直すと、再び顔を上げた。
「じゃあ、一緒に住んでいる親友というのは?」
「はい、CAの伊沢 美羽さんです」
「伊沢キャプテンの娘さんだよな。じゃあカレーの……、野中 翔一くんは? 君をマンションまで送って行った時に彼を見かけたけど、一緒に住んでるんじゃないの?」
「彼は兄と一緒に隣の部屋に住んでいます」
「は? 隣に?」
「そうです。私達四人は幼馴染なので、いつもどちらかの部屋でご飯を一緒に食べています」
なるほど、とようやく大翔は納得がいった。
「だから伊沢キャプテンも野中部長も、君のことを舞ちゃんと呼ぶんだな」
「はい。両親同士が仲が良くて、私達は家族ぐるみで大きくなったので」
「家族ぐるみか……。なんかそういうの、うらやましいよ」
え?と、舞が首をかしげる。
「俺は子どもの頃に日本を離れて、最近またアメリカを離れたから。どれだけ仲良くしていても、やはり会えなくなると関係が薄れてしまう」
「……先日お会いした、オーウェンさんとも?」
「そうだな。向こうではオフの日に一緒に出かけたり、職場でもくだらない話で盛り上がる親友だった。今は、メッセージのやり取りはたまにあるけど、会えないとどうしてもな。仕方ない」
寂しげに呟く大翔に、舞は少し考えてから提案した。
「私の実家に、よくみんなで集まるんです。今度キャプテンもいらっしゃいませんか? クリスマスや年末年始も、賑やかにパーティーすると思うので」
「いや、俺はいいよ。ホームパーティーなんて気後れする」
「アメリカにいらっしゃったのに?」
「日本の雰囲気がよく分からん。教官や部長もいらっしゃる場で、失礼があったらいけないしな」
「そんなことは……」
その時、野中が担当のディスパッチャーを連れて会議室に入ってきた。
舞と大翔は会話をやめて立ち上がる。
「お疲れ様です」
「相澤くん、舞ちゃん、お疲れ様。座って」
「はい、失礼します」
長いテーブルを挟んで、四人で向かい合った。
「佐倉さん」
「は、い!?」
会議室へ向かう途中、呼ばれて振り返った舞は、能面のように無表情のまま足早に近づいてくる大翔に、思わず後ずさる。
今日はこれから野中部長やディスパッチャーも交えて、初日の出フライトの飛行ルートについて説明を受けることになっていた。
たくさんの資料を胸に抱えていた舞は、大翔の様子に顔をこわばらせる。
「お、お疲れ様です、相澤キャプテン。あの、どうかなさいましたか?」
「話があるんだ。とにかく入ろう」
「は、はい」
舞は、ヒクッと笑顔を引きつらせながら頷く。
並んで席に着くと、大翔が舞の方に身体の向きを変えた。
「君、俺に嘘をついたね? 君の話は信用出来ない」
「ま、まさかそんな! 一緒に空を飛ぶパイロットですから、キャプテンには信用していただかなければと思っております」
「じゃあこれから質問するけど、絶対に嘘はつかない?」
「はい、約束します」
舞はゴクリと喉を鳴らして姿勢を正した。
「この間、もう一人の佐倉コーパイと一緒に飛んだよ。佐倉教官にそっくりで、背が高くてかっこいい青年だった。彼は?」
「あ、は、はい。双子の兄です」
「双子!?」
大翔は目を見開いたあと、視線を落としてため息をつく。
「何回驚かされるんだよ、まったく……」
気を取り直すと、再び顔を上げた。
「じゃあ、一緒に住んでいる親友というのは?」
「はい、CAの伊沢 美羽さんです」
「伊沢キャプテンの娘さんだよな。じゃあカレーの……、野中 翔一くんは? 君をマンションまで送って行った時に彼を見かけたけど、一緒に住んでるんじゃないの?」
「彼は兄と一緒に隣の部屋に住んでいます」
「は? 隣に?」
「そうです。私達四人は幼馴染なので、いつもどちらかの部屋でご飯を一緒に食べています」
なるほど、とようやく大翔は納得がいった。
「だから伊沢キャプテンも野中部長も、君のことを舞ちゃんと呼ぶんだな」
「はい。両親同士が仲が良くて、私達は家族ぐるみで大きくなったので」
「家族ぐるみか……。なんかそういうの、うらやましいよ」
え?と、舞が首をかしげる。
「俺は子どもの頃に日本を離れて、最近またアメリカを離れたから。どれだけ仲良くしていても、やはり会えなくなると関係が薄れてしまう」
「……先日お会いした、オーウェンさんとも?」
「そうだな。向こうではオフの日に一緒に出かけたり、職場でもくだらない話で盛り上がる親友だった。今は、メッセージのやり取りはたまにあるけど、会えないとどうしてもな。仕方ない」
寂しげに呟く大翔に、舞は少し考えてから提案した。
「私の実家に、よくみんなで集まるんです。今度キャプテンもいらっしゃいませんか? クリスマスや年末年始も、賑やかにパーティーすると思うので」
「いや、俺はいいよ。ホームパーティーなんて気後れする」
「アメリカにいらっしゃったのに?」
「日本の雰囲気がよく分からん。教官や部長もいらっしゃる場で、失礼があったらいけないしな」
「そんなことは……」
その時、野中が担当のディスパッチャーを連れて会議室に入ってきた。
舞と大翔は会話をやめて立ち上がる。
「お疲れ様です」
「相澤くん、舞ちゃん、お疲れ様。座って」
「はい、失礼します」
長いテーブルを挟んで、四人で向かい合った。



