「よーし、3人の自己紹介が終わったところで、3人もクラスに加わる嬉しいタイミングに、みんなお待ちかねの、席替えをします〜」
「「「「わ〜〜〜〜い」」」」
私を除くクラス全員が席を立ち大盛り上がり。
女子たちは、「平安くんと近くの席にならないかな…」「え〜私は縄文くんがいい!」「私は絶対鎌倉くんの隣希望!」と新たに加わる3人と自分の席を妄想中。
中2になってまだ1ヶ月くらいしか経ってないのに。
もう席替えか。
待てよ…。
これは時代くんたちと隣の席になれるかもしれないという、神的な単発ガチャなのでは…。
リアル(現実)で時代くんを観察&時代の話を聞けるなんて…。
ぶは! 鼻血出そう。
歴史オタク魂が燃えるぜ!
このガチャ…神引き、降臨せよ!
朝は急ぎすぎて服装や小物をじっくり見られなかったからな。
学校では制服になっちゃっているし。
縄文くんには狩の道具について聞きたいな〜。
平安くんとはもちろん、『源氏物語』『枕草子』『竹取物語』について語り合わないとだし。
鎌倉くんからは彫刻の話を聞けないかな。
鎌倉時代といえば運慶・快慶の「金剛力士像」だよな〜。
ふふふふふ。
おっと…。
クラスメイトになった時代くんたちを、どこかで受け入れ始めてしまっている自分に驚く。
これじゃいかんと大反省。
「クジを順番に引いてもらうぞ〜」とたむせんがクジの入った箱をゴトゴトゆすった。
窓側の一番前の席から順番に番号の入ったクジを取っていく。
こういうのは、最後のひとりが引くまで自分が何番か、言わないのが暗黙のルールだ。
ニヤニヤしながらクジを引く縄文くん。
箱に手を入れてから、なかなかクジを決められない平安くん。
「早くしろ」と平安くんの手を抜いた鎌倉くんは、なんの迷いもなくクジを引く。
みんな、何番だったんだろう…。
黒板に書かれた席の番号を眺めてドキドキしながら、自分の番を待つ。
うちのクラス<2年B組>はもともと22人だったから、時代くんたちが来て合計25人になった。
こう見ると碁盤の目みたいにマス目上にピッタリと区切られた座席表に美しさを感じる。
「平安京みたいー」と心の中でつぶやくと、クジの箱が回ってきた。
ーーーーーーーー教卓ーーーーーーーー
21 12 16 08 05
14 07 01 18 25
15 11 17 04 20
22 02 10 24 06
19 23 03 09 13
神よ!
降臨せよー!
「えい」っとクジを引いて、自分にしか見えないように恐る恐る番号を見た。
クジには<2>と書いてある。
黒板の座席表をもう一度見ると、なんとも言えない微妙な席でちょっぴりうんざりする。
でもでも、隣が時代くんかもしれないこの番号を大事にしよう…!
最後の子までクジが回るとたむせんが「番号の席に移動しろ〜」と号令をかけた。
クラスメイトたちは、譲り合いながら机と椅子ごと移動する。
「何番でしたか、縄文くん」
「俺、23!」
その声に女子たちが反応する。
「きゃー私<3>なんだけど!」と顔を手で覆いながらぴょんぴょん喜びのジャンプ。
「うさぎか!」と心に住む<美琴の悪魔>が悪態をつく。
縄文くん、後ろの席じゃん。
幸先いい!
最高!
「ぼくは、19です。隣ですね。鎌倉くんは?」
平安くんは斜め後ろ!
きたー!!!
うひょー!
神様、大感謝です。
そして、次は鎌倉くん…。
22!22!22!
もしくは10でもよし!
ごくんと息を呑んだ。
鎌倉くんの番号に、クラスの女子たちが意識を集中させているのがわかった。
私も同じように耳をダンボにして、鎌倉くんの息すら聴き逃さないように注意する。
「俺は…5…」
おーーーい。
めちゃくちゃ遠い。
前の私の席じゃねえか!
ここは、「俺は…22…」という鎌倉くんの発言待ちだったんだが。
「22って私と隣の席だね…!」の単発神ガチャ引きました展開だったよね!?
私のひとり心の中漫才を他所(よそ)に、クラスメイトたちは席を移動させ、席についた。
私の隣の席、22は誰だろう…?
そう思っていると「22はお休み中のイヤオイだから空けておいてくれ〜」とたむせんが私を見ながら言った。
イヤオイくんは、4月から来ていない。
中学に入ってからずっと休んでいると噂で聞いたことがある。
入院中とも聞いているけど、重い病気なのだろうか。
それ以上の情報は誰も持っていなくて、どんな子かもさっぱりだった。
のんちゃんは何番なんだろうと周りを見渡すと、窓側の一番前の席<21>に座って、私の方を見ていた。
手を小さく振って「またはなれた」と口パクしながら悲しそうな顔をするのんちゃん。
私も「か・な・し・す・ぎ」と口パクで応答した。
私の口パクを読んで、嬉しそうな顔になったのんちゃんはニコッと笑って前を向いた。
のんちゃんの背中を見ながら、いつも私のことを気にかけてくれて優しい親友だなと改めて感じる…。
のんちゃんにはいつか、本当のことを話したい…、正直でありたいなと同時に思った。
++++++++++
「み〜こ〜と〜! 近くの席になったな」
縄文くんが後からつんつんと私の背中をつっつく。
「そ、そうだね」
後ろを振り向いて応答すると「ぼくも近くですよ」と平安くんが割り込んできた。
「ははは」と苦笑いをして、前を向く。
歴史マニアからすると結構刺激が強いかも…。
鎌倉くんはーーと視線を向けると、隣の席と後ろの席の女子に質問攻めにされているようだった。
女の子たちがあざとく手で口を隠しながら笑い合っている横で、ムスッとした鎌倉くん。
何か言われたのかな?
鎌倉くんだけ席が遠くなっちゃったな…。
ーーーキーンコーンカーンコーン。
「ホームルームは終わりだ。1時間目は国語だぞ〜準備しておけ〜」
チャイムが鳴ると、たむせんが教材を取りに教室から出ていった。
時代くんたち、もしかして初授業!?
❤︎❤︎❤︎<ミコト>のひそひそ話❤︎❤︎❤︎
平安京といえば「泣くよ(794年)うぐいす平安京」…!
794年に桓武天皇って天皇が長岡京っていう都から平安京に遷都(都を移すこと)したらしいよ。
《アナヒス》の中でも平安京遷都の場面が出てきてさ〜というのは余談でした…!


