俺は今、風呂の中。
帰宅してルール決めをした後、縄文が土器を壊す事件があって…。
みんなで土器を直した後に、夕飯を食べた。
それからは、美琴→俺→平安→縄文の順番で風呂に入ることになって、俺の番が回ってきた。
この世界の風呂は画期的だな。
お湯の温度を調整できるとは…。
ちょうどいい温度で、今日あったことをあれこれ思い出してしまうーー。
今朝、この世界に来て、朝一番にミコトを見た瞬間。
こんな綺麗な人間が存在するのかと思った。
大きな目にキラキラした瞳。
まつ毛は長くて、伏し目がちになるとそれがよく際立つ。
肌は色白で透明感があって、鼻はスッと通っていてーー。
一目惚れってやつかもしれない。
ミコトが登校した後、ばあさんに言われるがままに制服を着てミコトの中学に登校した。
校門の前でたくさんの人に注目されてるときは、ミコトを巻き込みたくなくて、体が勝手に動いて引っ張って下駄箱まで行っちまった。
さすがに強引すぎたかもって反省はしている。
俺って独占欲が強いのか…。
でも学校では前髪で顔を隠していて少し安心した。
こんなに美しいものを他のやつに見せたくない。
俺はクラスでひとりだけ席が離れてしまった。
それに、放課後も剣道部の人に道場に連れて行かれて、ミコトたちと別行動だったーー。
俺は今日一日、ミコト話す時間が全くなかったけど、縄文と平安は、どんどん打ち解けてて。
なんだかイライラする。
《アナヒス》では、鎌倉時代ばかりプレイして、俺との時間をたくさん過ごしていたのに。
ミコトは俺との時間、足りなくないのか?
放課後だってーー。
『…付き合ってるんですか』
ミコトのことを馴れ馴れしく呼びつけにする剣道部の副部長「和令(なごみ・れい)」に、校門に向かうまでの道のりで質問したのを反芻する。
呼び捨ては気に食わない。
さわやかでなんでもそつなくこなす感じのいいやつそうな雰囲気。
なんだか腹立たしい。
俺とは真逆のタイプだ。
『付き合ってないよ。なんて言うか、美琴は俺のことお兄ちゃんみたいに思ってるんだ』
本当か?
その後もコソコソとミコトと話してたし…。
あいつはミコトのことが好きですオーラがダダ漏れだったけど、ミコトは気づいていないのか…?
ミコトはあいつのことが好きなんだろうか。
そういえば、ミコトは帰ってきてからも、ずっと俺たちのことを考えてくれていたな。
そういう、周りが見えていて、寄り添えるところも好きだなと思った。
ルールは俺たちのことを思って決めてくれたのに、縄文と平安ときたら、ワガママばかり。
なんか、あいつら距離も近かったしな。
くそ。
俺だけ蚊帳の外みたいで…。
風呂の中でモヤモヤ考えながら湯船に顔をぶくぶくっと沈めたーー。
++++++++++
風呂から上がって和室に入る。
平安に「風呂あがったぞ」と声をかけると、ルンルンしながらスキップして風呂に向かっていた。
縄文は、ばあさんとミコトと何やら話しているようだった。
また蚊帳の外…。
ーースッ。
和室の襖をそっと閉めて、ミコトから「この部屋を3人で使ってね!」と言われていた部屋に向かう。
すると、[ミコト]と看板のついた部屋を目にした。
「ここがミコトの部屋かーー」
ミコトと言葉にして、ブワッと顔が赤くなる。
心の中では呼んでいたけど、口にするのは初めてでなんだか恥ずかしくなった。
ミコトを目の前にすると、怖気付いて「お前」と言ってしまう俺。
こんな臆病だったか…?
武士たるもの男らしくありたいのに、ミコトを前にするといつも通り冷静でいられない。
そういえば、ミコトの部屋に入ることはルール決めのときに禁止されていた。
ドアが少し開いていて気になって覗いてしまう。
何か、隠していることがあるのだろうか。
「少しだけ…」
そう思ってミコトの部屋に足を踏み入れてしまったーー。


