「ちょっと、便所行ってくるわ〜」
鎌倉と平安に声をかけて、部屋を出る。
帰り道に聞いた話によると、平安は国語の授業で先生にめちゃくちゃ褒められたらしい。
本人から聞いたから、信ぴょう性にかけるけど、鎌倉もうんうんと頷いていておそらく本当のようだ。
鎌倉は剣道部に見出されて、勧誘されていた。
俺だって美琴とみんなにいいところを見せたい!
どうしようと廊下を歩いていると、ばあちゃんにばったりあった。
「ああ、縄文くん。この土器みたいなのが庭に落ちていてね」
ばあちゃんが重い縄文土器を持っていて、急いで受け取る。
俺と一緒に転送されてきたのか?
「ばあちゃん、悪いな。これ俺のだ! ありがとな」
「よかったよ〜しっかりしていていい器だね」
ばあちゃんに褒められて、ふわふわ嬉しい気持ちになる。
土器で何かできたら…。
あ!
縄文土器は米を炊くのに向いてないが、今朝のばあちゃんの朝食がうますぎたから、俺もご飯を炊いてみんなをもてなすのはどうだろう。
そしたら、平安と鎌倉の輝きと同等くらいなものになるんじゃないか!
「ばあちゃん! 頼みがあるんだ!」
+++++++++++
ばあちゃんに頼み込んで、縄文土器で米を炊くのを手伝ってもらう。
米をザルで洗っているとばあちゃんとの会話も弾む。
「縄文くんは、お米が炊けるなんてすごいねえ」
「まあな! 俺は森育ちだし! 家の近くにある森がどんぐりがたっくさんある森でさ。あと、川には魚がいーっぱい泳いでいて、ぴちぴち跳ねてるんだ!」
大きな手ぶりで説明すると、ばあちゃんはニコニコしながら聞いてくれた。
「家はな、土を掘ってつくるんだよ! こう、ぐるーって穴を掘ってさ。その上に木を組んで、屋根をかけんの!」
「竪穴住居のことかい?」
「ばあちゃん、知ってんのか!?」
盛り上がってしまって台にのせていた土器に触れてしまった次の瞬間。
ーーガシャーン。
土器が床に落ちて割れてしまった。
……。
思考が停止して動けなくなる。
「大丈夫かい?」
やさしくばあちゃんが声をかけてくれて、ハッと我に返る。
ああ、せっかくみんなのために準備したのに。
++++++++++
土器が割れた後、すぐにみんなが集まってきてくれた。
美琴も鎌倉も平安も、もちろんばあちゃんも元気づけてくれて…。
家族のあたたかさを感じた。
鎌倉の提案でみんなで土器を直すことになって、ばあちゃんが持ってきてくれた接着剤というやつで土器をもとの形に修復する。
みんないいやつだな。
「この形はこの隣ですかね!」
「縄文、それを取ってくれ。ここと組み合わせる」
俺の隣に座ったふたりが真剣に土器を直してくれている。
すると、美琴も和室に入ってきて、一緒に作業をしようとしてくれた。
「美琴も手伝ってくれるのか?」
「もちろんだよ。みんなで力を合わせよう」
美琴に相談してやらなかったのに。
美琴は怒らず、やさしく励ましてくれた。
「ありがとなー!」
ーーぎゅ。
思わず美琴に抱きつく。
美琴は少し驚いた後、よしよしと背中をさすってくれた。
安心するな。
「おい、離れろ!」
「それはやりすぎです!」
急いで俺のことを引っ張り、美琴から離そうとする鎌倉と平安。
うるせえ!
美琴が今俺を励ましてくれてんだぞ!
そんな俺らを見て、美琴がゲラゲラ笑う。
「ははは、なにこの状況!」
今日、朝から今まで美琴がこんなに大きな反応をしたことがなかったので、驚いた。
なんだこの感じ。
目が離せない…。
「美琴さん、そんな風にお腹をかかえて笑うんですね」
平安も鎌倉も驚いたようでフリーズしている。
「美琴! かわいい! その笑顔!」
思うより先に、声が出た。
かわいすぎるだろ!
なんだこれ!
その後は鎌倉と平安に小言を言われて、土器の修繕作業に戻る。
このとき帯びた熱は、夕飯を食べた後も冷めなかった。


