「はい。でも軽く捻っただけなので、大丈夫です」
「……あの、病院に行きましょう。治療費はお支払いしますから。今タクシーを呼びますね」
「えっ、いえ、そこまでしてもらわなくても大丈夫なので……!」
「でも……それじゃあせめて、手当てをさせてください。俺の部屋に……って、いきなり見知らぬ男の部屋に上がるなんて嫌ですよね。あの、すぐに部屋から救急セットを持ってくるので、ロビーで待っていてもらってもいいですか? よければ俺の肩に掴まってください。ソファまでお連れします」
言い切った青年は、香澄が歩きやすいようにと隣に移動して、肩を貸してくれようとしている。
一連の言動がスマート過ぎて、香澄が口を挟む隙もなかった。
けれど、それはマズい。
ロビーで待っていれば、彼氏である雄也が……いや、元彼氏と先ほどの女性が下りてくるかもしれない。また鉢合わせるのは面倒だ。
けれど足首の痛みは増すばかりだし、手当は不要だと言っても、この青年はそう簡単には納得してくれそうもない。



