「っ、」
咄嗟に避けた香澄は、ヒールの高い靴を履いていたこともあり、バランスを崩してしまった。転ぶ、と目を瞑ったが、身体に痛みは感じない。代わりに、逞しい腕に抱きとめられる。
「大丈夫ですか!? すみません、少しボーッとしていて……!」
香澄の手を引いて転倒を阻止してくれたのは、ミルクティー色の髪をした、それは美しい青年だった。韓国アイドルにいそうな系統の顔立ちをしている。
香澄と目が合うと、青年は「あなたは……」と驚いたように目を丸くした。
「あの、どこかでお会いしたことがありましたか?」
こんな美男子、一度会ったらそう忘れそうもない。
けれど香澄の記憶の中に、思い当たる顔は浮かばなかった。
「……いえ。それよりも、本当にすみませんでした。どこか怪我は……って、足。もしかして捻っちゃいましたか?」
青年は香澄の左足に視線を落とすと、心配そうに眉を下げてみせた。
青年の言う通り、バランスを崩した際に足を捻ってしまっていた。ジンジンと鈍い痛みが伝わってくる。



