10分間で訪れた別れと出会い ~待っていたのは、強引な犬系男子の甘やかな求愛でした~



「慎くん、好きだよ」
「……えっ。突然どうしたんですか?」
「言いたくなっただけだよ」
「今の、もう一回言ってもらってもいですか? 録音しておきたいので」
「絶対にいや」
「えー、いいじゃないですか!」
「恥ずかしいから却下です。……っていうか、何だか焦げ臭くない?」
「……あ。火を止めるの、忘れてました」
「え!? もう、慎くんってば何やってるの!」
「すみません……!」

慌ててコンロの火を止めたけど、目玉焼きの裏は真っ黒こげになっていた。

「ふ、ふふ……もう、慎くんといると本当に飽きないっていうか……毎日楽しいや」

恋愛事には興味がなかったし、こんな風に誰かと生活を共にして笑い合える未来が待っているなんて、思っていなかった。

ずっと一緒にいたい、自分だけを見ていてほしい。
たった一人に対してこんな独占欲を抱くなんて、過去の自分に言ったところで、信じてもらえないだろう。

――およそ一年前のあの日、偶然一本早い電車に乗ってしまった。
そのわずかな十分という時間が、私の人生を大きく変えてくれたのかもしれない。