10分間で訪れた別れと出会い ~待っていたのは、強引な犬系男子の甘やかな求愛でした~



「……香澄さん、すみません。もう近づくなとか、勝手なことを言ってしまって」
「ううん、いいの。もう会うつもりもなかったし、最後に面と向かって気持ちを伝えることができて良かったよ」

雄也とは五か月ほど付き合っていた。もちろん、一緒に過ごした中で楽しかった思い出もたくさんある。
寂しい気持ちが全くないと言ったら嘘にはなるけれど、互いの気持ちが交わっていないのだから、一緒にいても、またいずれはほころびが生じていたはずだ。

「……ねぇ、香澄さん。今度、香澄さんが言っていたチーズケーキの美味しいお店を教えてくれませんか? 香澄さんの足が完治したら、一緒に食べに行きたいです」
「……うん、いいよ。一緒に行こうか」


――人生は、出会いと別れで満ちている。
ほんの数秒、数分の短い時間の中で、人との縁が結ばれることもある。

それは偶然でしかないのかもしれない。
けれど、その紡がれた縁を手放すか、より強固なものにするか。

決めるのは、いつだって自分自身だ。