「なぁ、香澄。さっきは悪かったって。あれはさ、アイツが強引に迫ってきただけなんだよ。もうアイツとは会わないって約束するからさ。俺にはお前だけなんだって」
雄也は慎の存在などまるで無視して、香澄に縋ってくる。
しかし何を言われたところで、あの現場を実際に見てしまった後では、その言葉を全て信じることは難しい。
香澄が返す言葉を悩んでいれば、雄也がその手を伸ばしてきた。
身を引いて避けようとすれば、後ろにいたはずの慎が雄也の手を掴んで阻止してくれる。
「香澄さんが嫌がってますよ。振られているのに言い訳ばかり並べて縋るなんて、みっともないんじゃないですか?」
香澄を守るように前に立ってくれた慎は、雄也を挑発するようなことを口にする。
その挑発に見事に乗った雄也は、苛ただし気に声を荒げた。
「はあ? ……お前が香澄の何なのかは知らないけど、これは俺たちの問題だ。関係ない奴が口挟んでくるんじゃねーよ」
「いえ、関係なくはないですね」
「どういうことだよ。……まさか香澄、お前も浮気してたのか?」
雄也はハッと目を見開いて香澄を見る。
まさか浮気を疑われるとは思わなかったので呆然とした気持ちになりながらも、香澄はそれを否定しようとした。
けれど先に慎が言葉を返す。



