10分間で訪れた別れと出会い ~待っていたのは、強引な犬系男子の甘やかな求愛でした~



「確かに今は、知らないことの方が多いです。だからこそ、これからたくさん知っていきたい。そしてまた好きの気持ちが積み重なって、大きくなっていくんだと思います」
「っ、蓮見くん、もういいから……」
「いえ、言わせてください。俺は香澄さんが、恋人として俺を好きになってくれるよう努力します。それで香澄さんが俺を好きになってくれなかったからって、他の人に目が向くことはありません。香澄さんが俺を好きになってくれるまで、絶対に諦めません。俺はあなたが好きなんです。だから……これからも、俺と会ってくれませんか」

ここまで真っ直ぐで熱烈な愛の言葉を、香澄は聞いたことがなかった。
慎は照れる素振りもなく、顔を赤く染めて固まっている香澄の目を、真っ直ぐに見つめる。
かと思えば真剣な相貌を崩して、しゅんとした顔で眉を下げてみせた。

「……だめ、ですか?」
「……だめじゃ、ないです」

小さな声で了承した香澄に、慎は嬉しそうに笑う。

――その顔は、ずるい。
これは確信犯なのではないかと、そう思いながらも、香澄はすでに慎の裏表を感じさせない誠実さに絆されかけていた。

香澄もまた、慎のことをもっと知りたいと、同じ気持ちを抱いていた。