激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

人払いをしたあと、
ビンセントは皇帝としての玉座の前で立ち止まり、
側近たちへ厳かに告げた。

「アズールティア王国ルチア王女をドラゴニア帝国皇后として迎える。」

声は落ち着いていたが、
その奥に潜む熱は明らかだった。

「彼女の姉君ベリル王女の喪が明け次第、正式に国中へ布告する。
——ルチアは、その間この城で大切に保護し、すべての礼をもって接するように。」

側近たちの胸の奥から沸き上がる歓喜。
しかし以前の失敗(やりすぎ婚約パーティー)があるため、
彼らは拳を握りしめて静かに震えるしかない。
(やっと……!ようやくこの日が……!)
(これ以上の皇后候補は世界のどこにもいない!)
(陛下が“彼女のために変わった”――これが全ての答えだ)

その宣言を横で聞いていたルチアは、
静かに、でも確かに微笑んだ。

今までなら怯えや戸惑いが
混じっていたかもしれない。
けれど今は違う。

涙で何度も崩れ落ちた自分を抱き留め、
故郷に共に駆けつけ、
姉の遺骸を見つけるその瞬間まで
寄り添い続けてくれた男。

“ドラゴニア帝国皇帝”ではなく、
一人の優しい人間としてのビンセントを、
ようやくちゃんと理解できた。

そして、
“離れたくない”と思ってしまった。