復興の道筋に目処がつき、
ビンセントはついに
帝国へ戻る日を迎えた。
姉も暮らす国であるため気がかりもあるが、
彼は皇帝。
いつまでも国を留守にはできない。
海軍はすでに港に整列し、
皇帝の帰還に備えている。
ルチアは早朝の海岸に立ち、
潮の匂いの中で揺れる軍艦を見つめていた。
「帰りたい」「自由に生きたい」と願っていたのに、
今は真逆の感情が胸を支配している。
背後から歩く音。
砂を踏む重い足取りと、
聞き慣れた低い声。
「……心配するな。お前の国は必ず立ち直る。」
振り返れば、
やはりビンセントだった。
泥が跳ね返った彼の鎧は
ところどころ傷んでいるのに、
その瞳だけは深い慈しみに満ちていた。
「ルチア。心が癒えるまで、ゆっくりしていろ。
そして……もしドラゴニアに来てくれるなら、迎えに来る。」
まるでプロポーズの言葉のように、
静かで確かな想いが込められていた。
ルチアの心臓が跳ねる。
彼に手を伸ばしたいのに、
言葉にならない。
「私を……置いて帰るの?」
自分の声が震えていることに気づいて、
ハッとする。
「ずっとそばにいるって……言ってくれたのに……」
彼は一度だけ、痛むように目を細め、
そっとルチアの肩に触れた。
荒々しい手なのに、
その触れ方は驚くほど優しい。
「そばにいるさ。――呼んでくれれば、いつでも。」
そう言い残し、
彼は振り返ることなく軍艦へ向かった。
その背中が、あまりに遠く感じた。
ビンセントはついに
帝国へ戻る日を迎えた。
姉も暮らす国であるため気がかりもあるが、
彼は皇帝。
いつまでも国を留守にはできない。
海軍はすでに港に整列し、
皇帝の帰還に備えている。
ルチアは早朝の海岸に立ち、
潮の匂いの中で揺れる軍艦を見つめていた。
「帰りたい」「自由に生きたい」と願っていたのに、
今は真逆の感情が胸を支配している。
背後から歩く音。
砂を踏む重い足取りと、
聞き慣れた低い声。
「……心配するな。お前の国は必ず立ち直る。」
振り返れば、
やはりビンセントだった。
泥が跳ね返った彼の鎧は
ところどころ傷んでいるのに、
その瞳だけは深い慈しみに満ちていた。
「ルチア。心が癒えるまで、ゆっくりしていろ。
そして……もしドラゴニアに来てくれるなら、迎えに来る。」
まるでプロポーズの言葉のように、
静かで確かな想いが込められていた。
ルチアの心臓が跳ねる。
彼に手を伸ばしたいのに、
言葉にならない。
「私を……置いて帰るの?」
自分の声が震えていることに気づいて、
ハッとする。
「ずっとそばにいるって……言ってくれたのに……」
彼は一度だけ、痛むように目を細め、
そっとルチアの肩に触れた。
荒々しい手なのに、
その触れ方は驚くほど優しい。
「そばにいるさ。――呼んでくれれば、いつでも。」
そう言い残し、
彼は振り返ることなく軍艦へ向かった。
その背中が、あまりに遠く感じた。



