船が港に近づくにつれ、
目に飛び込んでくるのは
瓦礫と泥、折れた桟橋、船の残骸──
かつてルチアが幼いころから親しんできた
賑やかな港の面影はなく、
異臭と静寂がただ広がっていた。
風は弱まったはずなのに、
海はまだ荒々しく唸っている。
その音だけが、
台風が“まだ終わっていないこと”を突きつける。
ルチアは息を呑み、足が震えた。
「……こんなの、嘘よ……」
「ルチア、待て!」
ビンセントが背後から叫んだが、
彼女は耐えられず、
そのまま桟橋へ駆け出した。
人々は黙々と泥をかき出し、
傷ついた町を必死に支えている。
その中心で、
ルチアのよく知る男性──アズールティア総督、
義兄カラムが
泥だらけの姿で立っていた。
その顔を見た瞬間、ルチアは背筋が凍る。
「お義兄さん……? ベリル姉さんは? どこにいるの?」
カラムは唇を噛み、かすかに首を振った。
「……ベリルがいない。台風の夜、港を見てくると言って出て……それっきり戻って来ていないんだ」
「──っ!」
ルチアは顔を覆い、しゃがみ込む。
震える肩にカラムが触れようとしたが、
手が止まる。
彼の目もまた、
深い絶望に沈んでいた。
目に飛び込んでくるのは
瓦礫と泥、折れた桟橋、船の残骸──
かつてルチアが幼いころから親しんできた
賑やかな港の面影はなく、
異臭と静寂がただ広がっていた。
風は弱まったはずなのに、
海はまだ荒々しく唸っている。
その音だけが、
台風が“まだ終わっていないこと”を突きつける。
ルチアは息を呑み、足が震えた。
「……こんなの、嘘よ……」
「ルチア、待て!」
ビンセントが背後から叫んだが、
彼女は耐えられず、
そのまま桟橋へ駆け出した。
人々は黙々と泥をかき出し、
傷ついた町を必死に支えている。
その中心で、
ルチアのよく知る男性──アズールティア総督、
義兄カラムが
泥だらけの姿で立っていた。
その顔を見た瞬間、ルチアは背筋が凍る。
「お義兄さん……? ベリル姉さんは? どこにいるの?」
カラムは唇を噛み、かすかに首を振った。
「……ベリルがいない。台風の夜、港を見てくると言って出て……それっきり戻って来ていないんだ」
「──っ!」
ルチアは顔を覆い、しゃがみ込む。
震える肩にカラムが触れようとしたが、
手が止まる。
彼の目もまた、
深い絶望に沈んでいた。



