激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

嵐はなかなかおさまらず、
船体が揺れ、
ついにルチアは泣き出してしまう。

「イヤ……沈んだらどうしよう……っ」

涙がこぼれ、
ビンセントの胸を濡らす。

ビンセントはルチアの涙を指でぬぐい、
額に唇を落とす。
「絶対に沈まない。俺がいる。ここには俺の軍がいる。」

「でも……」

「お前の国を守りに行くんだろ?
アズールティアに着くまで、お前は俺の腕の中で安心していればいい。」

ビンセントがこんな言葉をかけてくれるなんて、
ルチアは想像もしなかった。
でもこの迷いのない言葉は
ルチアを安心させるには十分だった。

ビンセントはルチアを抱いたまま
揺れに合わせて身体を支え、
手を温め、髪を撫でた。
「怖くない、俺がいる」と何度も囁き、
ルチアを胸にぎゅっと閉じ込め続けた。

ルチアの心が、
決壊しないわけがなかった。

嵐の音の中で、
ルチアはそっと彼の胸に顔を埋め、
「……ねぇ、ビンセント。」
と甘えるように彼に声をかける。

「ん?」

「あなたがいて……よかった。」

ビンセントは動きを止め、
息を呑む。
「……今の、もう一回言ってくれ。」

「やだ。」

「言ってくれたら……もっと抱きしめてやる。」

「……もう十分抱きしめてるじゃない……」

「足りないんだよ。俺は。」
ビンセントは、
静かに、熱く、ルチアを包み込む。

嵐の夜の軍艦で、
2人の距離はついに――
後戻りできないほど近づいていった。