激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

城に帰るなり、
謁見室の扉を勢いよく叩いた。

「ビンセント!! アズールティアが大変なの!!」

いつになく切羽詰まった声に、
ビンセントは目を見開く。

ルチアは息を荒らしながら必死に説明した。
「巨大台風が発生したって…!高波も…家も……。
ねぇ、お願い、私を帰らせて。すぐに。今すぐ!私、絶対に帰ってくるから!!」

ルチアの目には涙が溜まっている。
普段あれほど気丈なルチアが、
こんなふうに取り乱している。

ビンセントは即座に立ち上がった。
いつもの空回り皇帝ではない。
そこにいたのは “即決即断の支配者” だった。

「至急、海軍を呼べ。最大速力の軍艦を出す。
救援物資を積めるだけ積み込め。救援隊と医師団も同行させろ。——急げ。」

側近たちは慌てて散っていく。
指示は完璧、早い、
そして迷いが一切ない。

ルチアは震える声で言った。
「……本当に、連れて行ってくれるの?」

ビンセントはルチアの手を握りしめる。
その手は強く、温かい。

「当たり前だ。
お前の国だろ。お前の民だろ。
助けに行くのに理由がいるか?」

その瞳は驚くほど真剣だった。
「軍艦が最速だ。……ルチア、行くぞ。今すぐ。」

その瞬間、
ルチアは胸の奥が
ぎゅっと締めつけられるような感覚に襲われた。

——あぁ、この人は…。
——この人は、私を“一人の人間として”こんなに大切にしてくれるんだ……。