その秋、
ドラゴニア帝国の空は
一週間以上どんよりとした雨雲に覆われていた。
石畳に落ちる雨粒をぼんやり眺めながら、
ルチアは胸の奥のざわつきを押さえられなかった。
「アズールティア…この時期は毎年、台風が多い時期よね……」
台風が来るのは毎年のことだ。
別に珍しいことではない。
けれど今年は祖国を離れているからか、
頭から離れないのだ。
なぜか嫌な予感がする。
その重苦しい感覚に押されるように、
彼女はふらりと城下町へ降りた。
市場の魚屋で、
店主が空の桶を睨みつけていた。
「まいったよ…。南の海でとんでもねぇ巨大台風が起きたらしくてな。アズールティアやエスメリアが相当やられたって話だ。魚が全然入って来ねぇんだ。」
その瞬間、
ルチアの顔色が、見る間に真っ青になる。
「……え?」
高波。暴風。浸水。
家の脆い海沿いの村。
幼い頃から聞き慣れた被害の光景が、
脳裏で鮮明によみがえる。
——帰らなきゃ。
——帰らなきゃ、みんなが危ない。
ルチアはほとんど走るように城へ戻っていた。
ドラゴニア帝国の空は
一週間以上どんよりとした雨雲に覆われていた。
石畳に落ちる雨粒をぼんやり眺めながら、
ルチアは胸の奥のざわつきを押さえられなかった。
「アズールティア…この時期は毎年、台風が多い時期よね……」
台風が来るのは毎年のことだ。
別に珍しいことではない。
けれど今年は祖国を離れているからか、
頭から離れないのだ。
なぜか嫌な予感がする。
その重苦しい感覚に押されるように、
彼女はふらりと城下町へ降りた。
市場の魚屋で、
店主が空の桶を睨みつけていた。
「まいったよ…。南の海でとんでもねぇ巨大台風が起きたらしくてな。アズールティアやエスメリアが相当やられたって話だ。魚が全然入って来ねぇんだ。」
その瞬間、
ルチアの顔色が、見る間に真っ青になる。
「……え?」
高波。暴風。浸水。
家の脆い海沿いの村。
幼い頃から聞き慣れた被害の光景が、
脳裏で鮮明によみがえる。
——帰らなきゃ。
——帰らなきゃ、みんなが危ない。
ルチアはほとんど走るように城へ戻っていた。



