激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

その夜、
2人は久しぶりにゆっくり語り合う。

暖炉を前に並んで座り、
ビンセントは王でも皇帝でもなく、
ただひとりの男として口を開く。

「俺は……怖かったんだ。
 ルチアがアズールティアに帰ってしまったら、二度と会えない気がして」

ルチアの胸に、
思いがけず痛いほど響く言葉。

「だから、焦って……奪おうとした。
 そんなの、愛じゃないと……姉上にも言われたのに」

ビンセントがこんなふうに
自分を責める姿など見たことがなく、
ルチアは思わず彼を見つめる。

「……私も、勝手に決めつけて逃げようとしてたわ。
 ここで生きることがただ怖かったの。
 だけど……あなたといる時間は、嫌じゃなかった。本当よ」

その一言に、
ビンセントは息を呑む。

意識せず近くなる2人──
けれど今日はそっと手を握るだけで、
互いに満たされていく。

焦らず、急がず、
ただ静かな夜が2人の距離を縮めていった。