激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

ビンセントは続けた。

「宝石も、ドレスも……ルチアが望むならいくらでも買ってやる。だけど、お前が笑っていてくれることのほうが、俺には百倍大事だ。」

そして、絞り出すように言う。
「……ルチア。
俺の隣にいてほしいなんて、今は言わない。
ただ……お前の恐さを、俺にも分けてくれ。
一緒に乗り越えたいんだ。」

ルチアは涙の中で、
初めてビンセントの弱さを見た。
それは、皇帝ではなく――
ひとりの「男」の姿だった。

胸の中の不安が少しだけほどけていく。
ビンセントはそっとルチアに歩み寄った。

そして、
逃げ道をふさぐのではなく、
“支えるため”の抱擁を与える。

きつくもなく、甘くもない。
ただ、静かに、
そっと包み込むだけのハグ。

「……あんな宴、戻らなくていい」

低く静かな声が、
荒れていたルチアの心に沁み入っていく。

ルチアは肩を震わせ、
ようやく「分かってくれた」と安堵する。

「無理に笑わなくていい。
 無理に応えなくていい。
 俺は……もっと、お前の気持ちを知るべきだった」

海の波音だけが響く空間で、
2人はしばらく抱き合ったまま動かなかった。