激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

帝国の城は今日も祝祭のように明るい。
だがルチアの部屋の扉の向こうだけは、
しんと静まり返っていた。

部屋から一歩出るだけで、
侍女は深々と頭を下げ、
兵士は「ご婚約おめでとうございます!」
と声を張り上げる。

「……違うのに。」
ルチアはそっと部屋へ引き返す。

自分の意思で頷いた覚えなんて、ない。
なのに城全体が
「次期皇后を祝福する祭り」
みたいな空気になっている。
居心地の悪さは増すばかりだった。

食事もろくに喉を通らず、
ベッドに座り込みながら思う。
――私、ここにいたらいけない気がする。

胸がぎゅっと苦しくて、
何をする気にもなれず、
ただひたすらベッドに仰向けになっていた。

一方のビンセントも報告を受けていた。

「陛下。……ルチア様は本日もお部屋から出られず……」

ビンセントは眉をひそめる。
(どうしてだ? 俺は彼女が安心できるようにと……あれも、これも……)

自分なりに愛を示してきた。
宝石、ドレス、護衛、待遇。
“帝国の皇帝の婚約者として当然の誠意”を
形にしたつもりだった。

だが、
彼女はどんどん暗い顔になっていく。

「どうすれば、彼女は……俺のそばにいることを不安に思わずに済む?」
ビンセントの胸に初めて芽生えた
「愛するがゆえの無力感」が
彼を苦しめていた。