激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

「息はしてたわよ!!」
「……してたな。」

二人の目が合う。
一瞬、静寂。

ビンセントは髪をかき上げ、
顔をそむける。

「……悪い。あんまり寝顔が可愛いから、つい近づきすぎた。」

「か、可愛いとか言わないでよ!!」

「いや、可愛いだろ。」
真顔で即答するビンセント。

ルチアは赤面しすぎて
顔から火が出そうだった。

二人が乾ききっていない
濡れた外套のまま朝帰りすると、
兵士・侍女・側近たちは一斉に
「……!!!」 と固まる。

その日のうちに、
宮廷の噂ネットワークは大炎上した。

「あのお二人、朝帰りだったって!?」
「昨晩、陛下とルチア様は同じ寝床だったらしい!」
「陛下、あの様子は……間違いないな」
「もう、ルチア様のお腹には――」
「おい言うな!」

ビンセントが謁見の間に戻ると、
彼を幼い頃から知る真面目な側近・ビンスが
真っ青な顔で詰め寄る。

「へ、陛下!!」

「なんだ、朝から騒がしい。」

「昨夜……ルチア様と宿泊されたとか……!」

「悪天候だったからな。仕方ないだろ。何か問題か?」

「大ありです!!!」
ビンスは震える声で続ける。
「正式な婚姻前に……その……
もしお子が出来てしまったら……っ」

ビンセントは沈黙。

ビンスはさらに顔を赤くして叫ぶ。
「マズイです!! 非常にマズイです!!
婚姻の順序が逆転すると、帝位継承権にも影響が!!」

ビンセントは眉をひそめて一言。
「……お前は何を想像しているんだ。」

「陛下のご年齢と……健康状態と……
そして相手がルチア様であることを考えれば……
なにも無かったなんて、誰も信じません!!」

ビンセント、完全に言葉を失う。
(誰も……?)
(そんなに俺は……やりそうな男に見えるのか……?)

じわじわダメージを受ける皇帝であった。