激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

でもルチアは――
完全に昨夜の甘えを忘れている。
「……ビンセント、あんた本当にちょっと近い。どうしちゃったの?」

(昨夜の“行かないで”を思い出して勝手にドキドキしているビンセント)
「……別に。お前の体調が心配なだけだ。」

「え、そう? なんか……ありがとう……」

そして変なのは、
ビンセントだけではなく
周りの者たちの態度もだった。

側近・侍女・兵士に至るまで、
全員が 「陛下の本命はルチア様」 と知っているため、
いつも以上に恭しく丁寧に接する。

「ルチア様、お加減いかがですか」
「お部屋は暖かすぎませんか?」
「何か必要なものがあればいつでもお申し付けください」

状況がまるで飲み込めていないルチアは
完全に置いてけぼりだった。

「ねぇ、なんか……みんな変じゃない?あんたも含めて」

ビンセントのこめかみが
ピクッと反応する。
「……ルチア。」

「なに?」

ビンセントは喉がひりつくほど緊張した声で、
しかし聞かずにはいられない。
「昨夜のこと……覚えていないのか?」

「昨夜?私、寝てただけじゃないの?」