激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

ルチアはその大きな手に、
ふと視線を落とす。
いつもより優しい。
いつもより近い。
なぜ?
どうして胸がこんなにドキドキするの?

ビンセントも、
ルチアの柔らかい表情に息を呑む。
「……君がそんなに素直だと、こちらの調子が狂う。」

「だって……これでも私、病人なのよ?」

沈黙。
でも重くない。
甘くて、もう一歩踏み込めば、
簡単に溶けてしまいそうな沈黙だった。

ビンセントは思わず視線を逸らし、
立ち上がる。
「……もう少し休め。医師を呼んでくる。」

本当は離れたくないくせに、
離れないと心が暴走しそうで危険だ。

部屋の扉に手をかけた瞬間、
背後からルチアの弱い声が追いかける。
「……行かないで。」

その一言が、ビンセントの胸を打ち抜く。

振り返れば絶対に理性が崩れる。
だから、振り返れない。

扉にもたれかかり、静かに息を吸う。

(……どうすればいい。俺は、もう――)
彼の心は、
完全に恋の迷走ゾーンへ突入していた。