激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

「なっ……! な、なぜお前がここに……」

「いや、それ私のセリフ。皇帝が何隠れてコソコソしてんのよ」

「べ、別にいいだろう! 俺は皇帝なのだから、どこに行くのも自由だ!」

「ま、それもそうね。じゃ、私は散歩の続きするから」

ルチアはあっさりと背を向けて歩き出した。

ビンセントは思わず、
「えっ……それだけ!?」
と声を上げてしまう。

ルチアは怪訝な顔で振り返る。
「え?なに、話したいことでもあった?
私は別にあんたと世間話する用事ないんだけど」

バッサリ言い捨てると、
今度こそ涼しい顔で去っていった。

残されたビンセントは、
自分でも理解不能な気持ちに支配される。
(なんだ……なんなんだこの……胸の中がざわつく感じは……?怒っている?いや違う……むしろ……)

悔しいのに、なぜか楽しい。
(こんなふうに“対等”に話せる女……あいつが初めてか……?)
気づきたくない感情が、
ビンセントの中で確実に芽生えていた。

この二人の様子を
物陰から何人かがじっと見ていた。

「……あれ?皇帝、なんか……照れてません?」
「やっぱり……ルチア様の時だけ反応がおかしいですよね?」
「これは……もう決まりだろ……!」
「ルチア様こそ我々の希望の光!皇帝の心を動かせる女が……!!!」

花嫁審査半ばにして、
ビンセントを除く官僚たちの心は
ルチア支持に傾いていた。