激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

そんな中、ルチアはというと———

「ふぅ……広いわねこの離宮。迷うじゃない」

気構えゼロ。
もちろん、
彼女だって馬鹿ではない。
きっとどこかで誰かが見ているのだろうと
当然予測していた。

しかし選ばれる気がないので、
いつ帰国することになっても良いように、
やりたいことをやっていた。

散歩して、花を眺めて、海を見て。
偶然、
重い荷物を運んでいる老使用人を見つけた時には
「持つわよ。こんな重そうなの年寄りにやらせていいはずないでしょ」
と彼が慌てるのもお構いなしに
荷物を運んだ。

行儀見習いとして
皇居に来ていた子ども(官僚の子息)が
血を流して泣いているのを見つけた時には
「だーいじょうぶ、ちょっと擦りむいたくらい平気平気。絆創膏ある?」
とお母さんのように世話を焼く。

台所では料理長から肉の下処理の話を興味津々で聞き、
魚料理のレシピ談議で盛り上がる。

人口も決して多くない小国ゆえ、
『みんなで助け合う』精神が
ごくごく自然に培われているアズールティアでは
ルチアの行動はいつも通りの光景である。

しかし階級社会の根付くドラゴニアでは、
ルチアの行動は型破りだった。

官僚たちは感心する。
「……ルチア様……素なのに、皇后どころか“帝国の母”みたいになってませんか?(震え声)」