激重シスコン皇帝は、勝ち気な姫に陥落する

そしてその夜。
皇居の大広間では、
皇帝主催の晩餐会が華々しく催された。

天井は高く、
巨大なシャンデリアが金と紅の光を放つ。
候補者の令嬢たちは、
競うように豪華絢爛なドレスを纏っていた。
宝石の光が眩しすぎて、
もはや誰が誰だかわからないほど。

だがその中で、
ルチアはひとりだけ
“違う光”を放っていた。

彼女のドレスは深いエメラルド色。
金糸が静かに縁を飾るだけで、
主張は控えめ。
けれどその引き算の美しさが、
逆に圧倒的だった。

耳元にはピンク珊瑚のイヤリング。
胸元には大ぶりの真珠ペンダント。
海の国の姫らしい、
派手すぎない気品と柔らかさがあった。

皇帝ビンセントは玉座に座り、
威厳たっぷりの表情をつくっていた。
……はずだった。

しかし視線は、
どうしてもルチアに吸い寄せられる。

(……まだいるのか、あの女……)
(いや、来てくれたのは、よかった……が……)
(ムカつく。なんで堂々としてるんだ)
(ていうか……綺麗じゃないか……?)

──混乱。
──葛藤。
──わけのわからない苛立ちと高揚。

玉座に座る者にあるまじき感情が、
胸の中をぐちゃぐちゃにかき乱す。

臣下A(小声)「……陛下、眉が動いております」
臣下B(小声)「陛下、少し落ち着かれて……」

ビンセント「落ち着いている!!!」
(※声が響き、目を見張る令嬢たち)

臣下たち(震えながら)「「……は、はい……!!」」