薄闇に沈む路地の奥
風に揺れる古い暖簾の向こうにその店はあった。
表には看板もなく
ただ煤けた木戸に刻まれた意味不明な紋様が
ここが " 呪物屋" であることを語っている。
戸を押すと鈴が鳴った。
ちりん、と乾いた音が
まるで骨の鳴る音のように耳に残る。
中は薄暗く灯りは天井から垂れた油灯が一つだけ。
壁には札の貼られた壺
血の色をした布に包まれた短刀
用途の分からぬ骨や数珠などが
無言でこちらを見下ろしている
『この店、だよな… 』
「だろ?買って早く帰ろうぜ」
不機嫌さを隠しきれない千紘に
不安と小声で声を掛ける結城。
空気は冷え線香と湿った土の匂いが混じり合っていた。
――水晶を探しに来た。
そう心の中で呟き棚の奥へと足を進めると
指先が、無数に並ぶ品の間を滑る度
ひそやかな囁きが聞こえた気がした


