秘密な恋愛

​「··さてと。」

​お父さんは短く息を吐くと、持っていた箸をそっと置き、組んだ両手の上に顎を乗せた。その瞳からは先ほどまでの穏やかな父親の顔が完全に消え失せ、冷徹な『大企業のトップ』としての鋭い光が芽依を真っ直ぐに射抜く。

​「芽依さん。···あいつが、君の前ではずいぶんと『人間らしく』なったようで、安心したよ」


「え?」

​予想外に冷ややかなトーンに、芽依の背筋にゾクッと冷たいものが走る。先程まで和やかに息子の幼少期を語っていた目の前の男性が、まるで別人のように見えた。

​「母親が死んで以来、あいつの心はどこかぽっかりと空いていてね。誰にも心を開かず、ただの動く人形のようにモデルをやっていた。それが、君と出会って、変わった。あいつが『商品』としての価値を保てて本当に良かった。あれでも、うちの事務所にとっては大事な看板商品だからね。…そういう意味では、君には非常に感謝しているよ」

​父は淡々と、まるで会社の業績でも語るかのように、息子のことを『商品』と言い放った。


​(商品···?)

その言葉が、芽依の胸にチクリと重く突き刺さる。