秘密な恋愛

夕方のスタジオ。
照明の熱と カメラのシャッター音。

「ハルくん今日ちょっと表情硬いよー!」
カメラマンが笑いながら声をかける。

「あっ、すみません」
慌てて作る笑顔。
けど、どこかぎこちない。

(芽依···)
昼間の事が、頭から離れないハル。


休憩に入り 、椅子に腰を下ろした瞬間

バシッ。
「って···」
軽く頭を叩かれる。
振り向くと、飯田が腕を組んで立っていた。

「なんかあったんだな、芽依ちゃんと」

図星。
ハルは視線を逸らす。

「···別に」
「嘘つけ」

飯田は隣に腰を下ろし、ため息をつく。
「お前はほんと分かりやすいな。事故のときもそうだったけど」

その言葉に、胸がきゅっと痛む。

「お前もプロなら、プライベートのことは仕事に持ち込むな」

静かだけど、重い言葉。 ハルは拳を握る。
「···分かってる」

分かってるのに、できない。
芽依の隣にいるのが自分じゃなくなるかもしれない。
その想像だけで、 胸が苦しくなる。

「何があったかは、知らねぇけどよ。多分、お前が原因なんだろうな。見てれば分かる」

その言葉に ハルの目が揺れる。

「仕事は仕事で完璧にやれ。で、終わったらちゃんと向き合え」

そう、ふと笑い ハルの頭をポンっと軽くたたく。

言われたことが、
全てその通りで 言い返せないハル。


「自分がめちゃくちゃ腹立つ···」

「なら。今の仕事をやり通せ。今は“モデルのハル”なんだから、お前は」




ギュ··と手に力が入り

「···はい」
短い言葉なのに、
先程までとは違い、言葉に力があった。


「ハルくん、そろそろいけるー?」
カメラマンの声に
ハルは

「はい。お願いします」
と負けず嫌いなのか、
プロとしてのスイッチが入り
一気に雰囲気が変わった。

(今は仕事で、俺はモデルのハルだ。···佑陽じゃねぇ···)