秘密な恋愛

それから数日後の
放課後。

芽依がひとりで帰っていると、

「芽依?」
後ろから声をかけられ、振り向く。

「拓海くん··!」
そこには偶然、拓海が立っていた。

「学校復帰できたんだな。もう体調は平気なのか?」

「うん、大丈夫」
少し緊張しながら、芽依は頷く。

「芽依ひとり?彼氏は?」
「ちょっと用事があって」
佑陽の仕事のことは言えず、
とっさにごまかす芽依。

拓海は少し考えてから、
「時間あるならさ。そのへんのカフェ、寄らね?」
と、さりげなく言う。


芽依は一瞬迷うも
(少しだけなら···大丈夫かな)

「うん、少しだけならいいよ」
そう答えた。


カフェに入り、席に着く。
「あれからさ。記憶とか、何か思い出した?」

拓海の言葉に、芽依は少し困ったように笑う。
「ううん、まだ何も。でもね」

芽依は続ける。
「時々ね、前にもこんなことあった気がする···みたいな感覚があるの」


「それさ」
「···?」

「思い出しかけてるんじゃね?」

その言葉に、キュッと胸が鳴る。
(思い出しかけてる?)
そう思うと、自然と芽依の口元がほころぶ。

その表情を、拓海が見逃すはずもなく。
(芽依、やっぱりあいつのこと···)


拓海は小さく息を吐く。
「なぁ。彼氏···佑陽とはどうなんだ?」

少し言いづらそうに聞く。

「えっと···なんて言えばいいのかな。はじめから、やり直そうって佑陽くんが言ってくれて」


「···そっか」
(俺が言ったからな、あいつに)


少しの沈黙。

カップを持つ指先に、ほんのわずか力が入る。

「じゃあ、だいぶ気持ちは楽になったんだな。今の芽依、この前より表情いいし」


その言葉に、芽依は少し胸がきゅっとする。

「うん、記憶はまだないけど。なんかね、佑陽くんといると、緊張するけど···安心するの」


その顔は、もう完全に恋する女の子だった。


(やっぱり芽依は···)

“記憶がなくても、また恋をしてる”

拓海はそう確信する。
「ちゃんと“恋”してるんだな」


“恋してる”

その言葉に、芽依はドキッとする。

「してるのかな?」
「してる」

即答だった。

まだ芽依を好きな拓海。
好きだけど、
また佑陽を好きになりかけている芽依を、
どこか応援したい自分もいる。

複雑な感情が、胸の奥で絡まる。

(言えねぇな···“俺にしろ”なんてさ)

そう思うのは、
過去に自分が芽依を傷つけてしまったから。
その気持ちもあった。