大学を卒業後、私は過去を振り切るようにして地元を離れ、就職を基に独り暮らしを始めた。
それが、今に至る。
就職先は至って普通。
中小企業の広報課の企画主任補佐という、なんとも微妙な立ち位置のOL。
職務内容としては、社内案内用のポップを作ったり、プレゼン資料を作る為のレイアウトを考えたり、と、まぁそこそこ補佐らしき事をしている、新人とも中堅とも言えない、真ん中な位置にいるけれど、先輩として来年度からは後輩育成に力を注ぐ様、課長から頼まれる事になっている。
プライベートと言えば、オフの日は独り暮らしを始めると共に習い事は元々しようと思っていたから、英会話スクールに、火木の退社後は残業がない限り、ホットヨガに通っている。
本当はダンススクールにも通いたかったけれど、時間は無限じゃないし、そんなに多く趣味に時間は取れないから、泣く泣く諦めたのだ。
やっぱり…ずっと、こびり付く様にして頭にあるのは悠久くんの事ではあったけれど、そんな事を頭の端にやらなければならないくらい、毎日朝はやって来て仕事には行かなきゃいけないから…。
割り振られるタスクを自分なりにペースを作って、周りに迷惑を掛けない程度に、程良い間隔で私は働いている。
お陰で、上司にも恵まれ、先輩達もとても丁寧に仕事を回してくれたりと、和やかな環境にいるから、お母さんには心の中で、
『お局様なんてものは、この場所には存在しないんだからね!』
と、舌を出したい気持ちもあったけれど。
ま、そんなの見えない的にいちいち報告なんてしなくてもいいか、と思い直した。
で、その優しい先輩の一人には、海外に向かった婚約者と長い期間、遠距離恋愛を続けている人がいて…。
『あぁ、羨ましいな…』
と、何度思った事だろうか。
まぁ、数え切れない程の告白も流されて終わった、私には到底やって来ないだろうと、溜息を吐く。
忘れたい。
いっそ、こんな気持ちも感情も、ぐちゃぐちゃに丸めて捨ててしまえたらいいのに。
何時までも幼い頃からの初恋なんてものに囚われている私は、なんて滑稽なんだろうか。
はぁ。
もう一度、小さく溜息を吐く。
幸せが溜息毎に逃げていくなら、私はもう枯れて土に還っているだろう。
何か、打開策はないかと頭を悩ませている。
でも、今は仕事中だと、切り替えて。
頭の中で次のプレゼンに使う資料は、どんなレイアウトを使おうか考え始めようとした時。
不意に先輩から声を掛けられた。
「柏木さん、受付に柏木さんを呼んで欲しいって言う方がいるみたいなんだけど…、そんなアポとかあったりする?そんなアポ受けてなかったと思ったんだけど、どうする?通しても大丈夫かな?」
「あ、はい…えっと、すみません、一度スケジュール確認しても良いですか?」
パソコン内で一応共有はしているけれど、個人的に受けているものも多少はあるので、デスクの引き出しから手帳を取り出してから、パラパラと今日のスケジュールを探す。
「どうかな?」
「あ、いえ。今日のアポイントは、何方とも受けてないんですけど……」
何だろう?
変な勧誘みたいなのとか、まさかのストーカーだったら困ったなぁ…。
そんな私の表情を見て、先輩はふむ、と一瞬の間考え込んでから…意を決したかのように、にっこりと私に笑い掛けてくれて、
「分かった、柏木さんを守ってあげたいお姉さんが、その方をこてんぱんに強制退出させ(追い出し)てあげるわ」
「え、あ、成宮せんぱ…って居なくなっちゃった…。受付に内線から入れてくれれば良かったのに…。あれ?でもなんで、先輩はそんなアポの話を誰から聞いたんだろ?んー…?」
はて?
と思いつつも、課長に呼ばれてしまったから、私は先輩の方に後ろ髪を引かれながら、席を立った。
それが、今に至る。
就職先は至って普通。
中小企業の広報課の企画主任補佐という、なんとも微妙な立ち位置のOL。
職務内容としては、社内案内用のポップを作ったり、プレゼン資料を作る為のレイアウトを考えたり、と、まぁそこそこ補佐らしき事をしている、新人とも中堅とも言えない、真ん中な位置にいるけれど、先輩として来年度からは後輩育成に力を注ぐ様、課長から頼まれる事になっている。
プライベートと言えば、オフの日は独り暮らしを始めると共に習い事は元々しようと思っていたから、英会話スクールに、火木の退社後は残業がない限り、ホットヨガに通っている。
本当はダンススクールにも通いたかったけれど、時間は無限じゃないし、そんなに多く趣味に時間は取れないから、泣く泣く諦めたのだ。
やっぱり…ずっと、こびり付く様にして頭にあるのは悠久くんの事ではあったけれど、そんな事を頭の端にやらなければならないくらい、毎日朝はやって来て仕事には行かなきゃいけないから…。
割り振られるタスクを自分なりにペースを作って、周りに迷惑を掛けない程度に、程良い間隔で私は働いている。
お陰で、上司にも恵まれ、先輩達もとても丁寧に仕事を回してくれたりと、和やかな環境にいるから、お母さんには心の中で、
『お局様なんてものは、この場所には存在しないんだからね!』
と、舌を出したい気持ちもあったけれど。
ま、そんなの見えない的にいちいち報告なんてしなくてもいいか、と思い直した。
で、その優しい先輩の一人には、海外に向かった婚約者と長い期間、遠距離恋愛を続けている人がいて…。
『あぁ、羨ましいな…』
と、何度思った事だろうか。
まぁ、数え切れない程の告白も流されて終わった、私には到底やって来ないだろうと、溜息を吐く。
忘れたい。
いっそ、こんな気持ちも感情も、ぐちゃぐちゃに丸めて捨ててしまえたらいいのに。
何時までも幼い頃からの初恋なんてものに囚われている私は、なんて滑稽なんだろうか。
はぁ。
もう一度、小さく溜息を吐く。
幸せが溜息毎に逃げていくなら、私はもう枯れて土に還っているだろう。
何か、打開策はないかと頭を悩ませている。
でも、今は仕事中だと、切り替えて。
頭の中で次のプレゼンに使う資料は、どんなレイアウトを使おうか考え始めようとした時。
不意に先輩から声を掛けられた。
「柏木さん、受付に柏木さんを呼んで欲しいって言う方がいるみたいなんだけど…、そんなアポとかあったりする?そんなアポ受けてなかったと思ったんだけど、どうする?通しても大丈夫かな?」
「あ、はい…えっと、すみません、一度スケジュール確認しても良いですか?」
パソコン内で一応共有はしているけれど、個人的に受けているものも多少はあるので、デスクの引き出しから手帳を取り出してから、パラパラと今日のスケジュールを探す。
「どうかな?」
「あ、いえ。今日のアポイントは、何方とも受けてないんですけど……」
何だろう?
変な勧誘みたいなのとか、まさかのストーカーだったら困ったなぁ…。
そんな私の表情を見て、先輩はふむ、と一瞬の間考え込んでから…意を決したかのように、にっこりと私に笑い掛けてくれて、
「分かった、柏木さんを守ってあげたいお姉さんが、その方をこてんぱんに強制退出させ(追い出し)てあげるわ」
「え、あ、成宮せんぱ…って居なくなっちゃった…。受付に内線から入れてくれれば良かったのに…。あれ?でもなんで、先輩はそんなアポの話を誰から聞いたんだろ?んー…?」
はて?
と思いつつも、課長に呼ばれてしまったから、私は先輩の方に後ろ髪を引かれながら、席を立った。



