(七海……先生のほう向きすぎだろ)

 授業中、七海の視線が先生のほうに吸い寄せられるたび、
 胸がチクチクと刺された。

 七海の意識がどっちに傾いてるかなんて、
 言葉にしなくても分かる。

(……マジで、猶予なんてあげたの失敗だったわ)

 でも、七海の気持ちに
 “無理矢理”入り込むのだけは違うと思った。

(ちゃんと自分で俺選んでもらいてぇから……
 待つなんて言ったけどよ……)

 七海が俯いて
 唇を噛むようにノートを見てるときなんて、

(……ちょっと抱きしめてぇとか思ってんの、俺だけ?)

 自分の気持ちがどんどん大きくなるのが分かった。

 そのとき。
 七海のスマホが小さく光ったのが見えた。

(……俺のメッセージに、
 すぐ反応してくれんのは嬉しいけど)

 その数秒後、七海の頬が真っ赤になった。

(……かわいすぎんだろ)

 胸の中の独占欲が、
 苦しくなるほど膨らんでいく。