階段で先生に腕をつかまれ、
そのまま引き止められた瞬間、
胸がドキッとして息が止まりかけた。
(せ、先生……どうしてあんな……)
七海の名を呼ぶ声は、
温かいのに苦しそうで、
どこか今までの“先生”じゃなかった。
そして……
その腕を玲央くんが振り払った瞬間。
「七海、こっち来い」
強く、でも乱暴じゃない手つきで
引き寄せられた。
(れ、玲央くん……!)
腕をつかまれたまま歩くうちに、
七海は気づいた。
(……震えてる?)
震えているのは、
自分じゃなくて——
玲央くんの手だった。
(なんで……?
玲央くん、怒ってる?
それとも……)
「七海」
「……っ」
「離す気ねぇから」
歩きながら言う声は、
息が少し乱れていた。
(やっぱり……怒ってるんだ……
先生が私の腕をつかんだから……)
でも次の言葉は違った。
「怖かった……
あのまま、お前……先生の方へ行くんじゃねぇかって」
「……っ」
胸が一気に熱くなる。
(玲央くん……そんな……
そんな風に思ってたの……?)
七海の手を握る指が、
ぎゅっと強くなる。
「七海、お前……
泣いてたよな、昨日も今日も」
「っ……!」
「なんで俺に言わねぇんだよ」
声が低くて、震えていて、
胸の奥を直接揺さぶるみたいだった。
「泣くなら……
俺の胸で泣けよ」
「……れ、玲央くん……」
「先生の前で泣くのは嫌だ」
その一言に、
七海の足は止まった。
玲央くんも立ち止まり、
振り返って七海の顔を覗き込む。
「七海……
なんで俺じゃなくて……先生のことで泣くんだよ」
その表情は、
怒りでも苛立ちでもなく、
七海を失いたくない男の顔
だった。
(そんな顔……見せないでよ……
胸が、苦しくなる……)
突然、玲央くんは七海の体を
自分の胸にぎゅっと抱き寄せた。
「七海……
怖かった……
ほんとに……」
七海の頬が玲央くんの胸に当たり、
心臓の早い鼓動が伝わってくる。
(玲央くん……
私より……震えてる……)
「俺から……離れんなよ」
その声は、
泣き出しそうなほど優しくて、
七海の胸を壊した。
(どうしてこんなに……
胸が熱くなるの……)
七海は玲央くんの胸で
小さく息を吸った。
「……離れないよ……」
自分でも驚くほど弱くて、
素直な声が漏れた。
その瞬間、
玲央くんの腕がさらに強く七海を抱きしめた。
「……今の、ちゃんと聞いた」
「っ……!」
「絶対離さねぇからな」
(どうしよう……
私……本当に……)
涙がこぼれそうになる。
帰り道、
七海は玲央くんに抱きしめられたまま、
一歩一歩、恋に落ちていった。
そのまま引き止められた瞬間、
胸がドキッとして息が止まりかけた。
(せ、先生……どうしてあんな……)
七海の名を呼ぶ声は、
温かいのに苦しそうで、
どこか今までの“先生”じゃなかった。
そして……
その腕を玲央くんが振り払った瞬間。
「七海、こっち来い」
強く、でも乱暴じゃない手つきで
引き寄せられた。
(れ、玲央くん……!)
腕をつかまれたまま歩くうちに、
七海は気づいた。
(……震えてる?)
震えているのは、
自分じゃなくて——
玲央くんの手だった。
(なんで……?
玲央くん、怒ってる?
それとも……)
「七海」
「……っ」
「離す気ねぇから」
歩きながら言う声は、
息が少し乱れていた。
(やっぱり……怒ってるんだ……
先生が私の腕をつかんだから……)
でも次の言葉は違った。
「怖かった……
あのまま、お前……先生の方へ行くんじゃねぇかって」
「……っ」
胸が一気に熱くなる。
(玲央くん……そんな……
そんな風に思ってたの……?)
七海の手を握る指が、
ぎゅっと強くなる。
「七海、お前……
泣いてたよな、昨日も今日も」
「っ……!」
「なんで俺に言わねぇんだよ」
声が低くて、震えていて、
胸の奥を直接揺さぶるみたいだった。
「泣くなら……
俺の胸で泣けよ」
「……れ、玲央くん……」
「先生の前で泣くのは嫌だ」
その一言に、
七海の足は止まった。
玲央くんも立ち止まり、
振り返って七海の顔を覗き込む。
「七海……
なんで俺じゃなくて……先生のことで泣くんだよ」
その表情は、
怒りでも苛立ちでもなく、
七海を失いたくない男の顔
だった。
(そんな顔……見せないでよ……
胸が、苦しくなる……)
突然、玲央くんは七海の体を
自分の胸にぎゅっと抱き寄せた。
「七海……
怖かった……
ほんとに……」
七海の頬が玲央くんの胸に当たり、
心臓の早い鼓動が伝わってくる。
(玲央くん……
私より……震えてる……)
「俺から……離れんなよ」
その声は、
泣き出しそうなほど優しくて、
七海の胸を壊した。
(どうしてこんなに……
胸が熱くなるの……)
七海は玲央くんの胸で
小さく息を吸った。
「……離れないよ……」
自分でも驚くほど弱くて、
素直な声が漏れた。
その瞬間、
玲央くんの腕がさらに強く七海を抱きしめた。
「……今の、ちゃんと聞いた」
「っ……!」
「絶対離さねぇからな」
(どうしよう……
私……本当に……)
涙がこぼれそうになる。
帰り道、
七海は玲央くんに抱きしめられたまま、
一歩一歩、恋に落ちていった。



