夕方の光が白い壁に反射して、部屋の中に淡いオレンジ色の影を落としていた。
私は今日仕上げた雑貨の写真を机の上で撮っている。
ケーキやスイーツの形のキラキラモチーフや、
アンティークグラスのアクセサリー。
どれも心を込めて作った自信作。
「……うん、いい雰囲気」
一人で頷いてしまう。
会社を辞めてから1年。
私は好きなデザインや手作り雑貨を少しずつ形にし、
依頼も少しだけ増えてきた。
まだ仕事と言えるほどではないけれど、
自分のペースで、穏やかに。
次は合同のデザインマルシェで作品を販売することになって、
追い込み作業中だった。
キッチンから、修司の声がした。
「リア、忙しいでしょ?外行くより……蕎麦でも茹でようか?」
振り返ると、仕事用のシャツを脱いでラフなTシャツに着替えた修司が、
袖を軽くまくってこちらを見ていた。
「修司もお仕事大変だっただろうに、食事まで作ってくれるなんて……いいの?」
「今こそがんばりドキでしょ?」
やりたいことを仕事にした彼は、
忙しくてクタクタで帰ってきたはずなのに、優しくしてくれる。
「本当に、いつもこの感謝の気持ちをどうお返しすればいいのか」
「全然、お安い御用ですよ」
そう言って、修司は私の頭に、ふわっと口づけた。
毎回その自然さに心臓が追いつかない。
湯が沸き始め、かつお出汁の香りが部屋に広がる。
そんな時、スマホが震えた。
画面にはミクちゃんからのメッセージ。
《リアちゃん元気〜? 来週ランチ行こ! ハンバーグの店できたの!》
思わず笑ってしまう。
ミクちゃんはいつも明るくて、少し抜けていて、10歳下だけど友達になってくれた。
ときどき「リアピ〜」なんて呼ばれて、くすぐったいけれど嬉しかった。
《リア、マルシェ出店するって聞いたよ!おめでとう。私も行くからね》
疎遠になっていた友達からも連絡がきた。
昔のように、仕事に追われるだけの日々ではなくなった。
関係が壊れたのではなく、
“忙しさ押し流されていただけ”だったのだと今ならわかる。
「リア、ゆず入れていい?」
「入れてほしい!」
返事をすると、修司が微笑んだ。
窓辺の観葉植物が夕風で揺れ、机には撮影途中の小物が並んでいる。
どこにでもある部屋だけど、どこよりも好きな場所。
(“ふたりの時間”って、こういう静かな幸せの積み重ねなんだ……)
私たちは付き合ってすぐ、将来のことを考えて一緒に暮らし始めた。
お互いの家の間の駅で、
小さいけれど作業スペースと撮影台まで確保できる間取りだった。
最近の修司は、いつもどこか穏やかな顔をしている。
外資系のプレスとして、
休日出勤もあるくらい忙しそうだが、毎日きちんと帰ってくる。
そして一緒に食べて、一緒に笑う。
私は今日仕上げた雑貨の写真を机の上で撮っている。
ケーキやスイーツの形のキラキラモチーフや、
アンティークグラスのアクセサリー。
どれも心を込めて作った自信作。
「……うん、いい雰囲気」
一人で頷いてしまう。
会社を辞めてから1年。
私は好きなデザインや手作り雑貨を少しずつ形にし、
依頼も少しだけ増えてきた。
まだ仕事と言えるほどではないけれど、
自分のペースで、穏やかに。
次は合同のデザインマルシェで作品を販売することになって、
追い込み作業中だった。
キッチンから、修司の声がした。
「リア、忙しいでしょ?外行くより……蕎麦でも茹でようか?」
振り返ると、仕事用のシャツを脱いでラフなTシャツに着替えた修司が、
袖を軽くまくってこちらを見ていた。
「修司もお仕事大変だっただろうに、食事まで作ってくれるなんて……いいの?」
「今こそがんばりドキでしょ?」
やりたいことを仕事にした彼は、
忙しくてクタクタで帰ってきたはずなのに、優しくしてくれる。
「本当に、いつもこの感謝の気持ちをどうお返しすればいいのか」
「全然、お安い御用ですよ」
そう言って、修司は私の頭に、ふわっと口づけた。
毎回その自然さに心臓が追いつかない。
湯が沸き始め、かつお出汁の香りが部屋に広がる。
そんな時、スマホが震えた。
画面にはミクちゃんからのメッセージ。
《リアちゃん元気〜? 来週ランチ行こ! ハンバーグの店できたの!》
思わず笑ってしまう。
ミクちゃんはいつも明るくて、少し抜けていて、10歳下だけど友達になってくれた。
ときどき「リアピ〜」なんて呼ばれて、くすぐったいけれど嬉しかった。
《リア、マルシェ出店するって聞いたよ!おめでとう。私も行くからね》
疎遠になっていた友達からも連絡がきた。
昔のように、仕事に追われるだけの日々ではなくなった。
関係が壊れたのではなく、
“忙しさ押し流されていただけ”だったのだと今ならわかる。
「リア、ゆず入れていい?」
「入れてほしい!」
返事をすると、修司が微笑んだ。
窓辺の観葉植物が夕風で揺れ、机には撮影途中の小物が並んでいる。
どこにでもある部屋だけど、どこよりも好きな場所。
(“ふたりの時間”って、こういう静かな幸せの積み重ねなんだ……)
私たちは付き合ってすぐ、将来のことを考えて一緒に暮らし始めた。
お互いの家の間の駅で、
小さいけれど作業スペースと撮影台まで確保できる間取りだった。
最近の修司は、いつもどこか穏やかな顔をしている。
外資系のプレスとして、
休日出勤もあるくらい忙しそうだが、毎日きちんと帰ってくる。
そして一緒に食べて、一緒に笑う。
