『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

「このエルヴィンの表情……!
 愛し、慈しみ、尊敬している人を見つめる目。
 こんな顔、他の誰が描けます!?
 “あなたにしか” 描けないのよ!!
 だってクラスでのあの人、いつも無口でムスッとしてるんだもの。クラスメイトがこの絵を見たら、びっくり仰天間違いなし!!」

圧が強すぎて、
シルヴィアはさらにのけぞり、
そんな彼女をクラウスが慌てて後ろから支える。

「エ、エラさん……ありがとうございます……!」

エルヴィンは顔を赤くしながらも、
言葉を失って作品を見つめていた。
その横顔は、
静かに胸を打たれた人のそれだった。

そして
人が途切れた瞬間──。

エルヴィンはそっとリディアのところへ歩み寄り、
小声で尋ねた。

「……あの絵を、譲っていただけませんか」

リディアは目を細め、
意味深に微笑んだ。

「もちろん構わないわよ。
 でも夫婦で相談してからの方がいいんじゃない?」

「いえ……これは、私の手で手元に置きたいんです。
 彼女が私を見てくれた、その“瞬間の眼差し”──。
 私の宝物です」

その言葉に、
リディアはほんの少し驚いた顔をしたあと、
ゆっくり頷いた。

「……本当に、あなたたち夫婦は素敵ね」

そのやりとりを横目で見ていたクラウスは、
温かい笑みを浮かべるのだった。