『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

暖炉の火がぱちぱちと音を立てる。
夜の静寂に包まれたアトリエ兼リビング。
エルヴィンは椅子に腰を下ろし、
シルヴィアの指示に従ってポーズを取る。

「エルヴィン様、もう少し顎を上げて?」
「こう?」
「うん……素敵」

言った瞬間、
自分の言葉に照れてシルヴィアの手が震え、
鉛筆の先がわずかに紙を擦った。

エルヴィンは微笑む。
「そんな真剣に見つめられると、俺の方こそ照れるんだけど」

「し、仕方ないでしょ……モデルなんだから……」

シルヴィアが視線を上げたら、
エルヴィンもこちらを見ていて、
二人の視線がぶつかる。
シルヴィアは慌てて視線を画用紙へ戻す。

「エルヴィン様って……私が想像してたより、ずっと描きにくい顔してる」
「えぇ!?そ、それは褒め言葉?」
「もちろん。彫りが深くて、優しい線もあって……表情がすぐ変わるから、固定するのが大変なの」

「表情が変わってしまうのは、君がそんな真剣に見つめるからだよ」

その一言に、
シルヴィアの心臓が「きゅっ」と鳴る。