《ウィステリア服飾学院》。
エルヴィンが入学してから
はや数週間がたった。
寡黙な彼はクラスで目立つタイプではなかったが、
丁寧な作業と誠実な姿勢で
教師に好印象を持たれつつあった。

その一方で——
クラスで浮いている生徒が1人。
彼女の名はエラ・ラングレー。
彼女は誰も近づきがたい雰囲気を纏っていた。
長い黒髪を無造作にまとめ、
教科書の余白には
奇妙な線画や抽象的な図案がびっしり。

授業では必要最低限しか喋らず、
他の学生からは
「天才肌だけど気難しい」と噂されていた。

実はエルヴィンも気にはなっていた。
彼女の課題で提出される作品の
縫い目ひとつ、形ひとつの繊細さに
息を呑んだからだ。
構築的で大胆、
でもどこか解放感がある。
“この服を着た女性はきっと羽ばたける”
そう思わせる力があった。

しかし、
いかんせん話しかける機会がなかった。