『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

赤い徽章。
革命派の目印──あの血みどろの赤。

シルヴィアの顔から血の気が引く。

「……終わったわ……」

クラウスも小さく息を呑む。

エルヴィンでさえ、
背中を冷たい汗が伝った。

男たちは無言で馬車を取り囲み、
乱暴に扉を開ける。
「全員降りろ。身分を確認させてもらう」
無慈悲な声が響く。

通りがかった平民たちも、
好奇の目で三人を指差しながら
罵声を浴びせる。

「貴族だ!」「革命の敵だ!」

その叫びに、
シルヴィアの肩がひきつった。

「髪はフードの中に隠して。できるだけ顔を伏せるんだ。」
エルヴィンはシルヴィアにそっと耳打ちする。
白銀の妖精は市民の間でも有名だ。
正体が露見されれば
何をされるか分からない。

エルヴィンは両腕で二人を庇いながら歩き、
小さな、薄汚れた民家の中へ押し込まれた。

粗末な木の床。
逃げ場などない。

(ここで……私たちは殺されるの?)
シルヴィアの唇が青ざめる。

クラウスも拳を握りしめ、震えていた。

エルヴィンは三人の中でただ一人、
最後まで諦めていなかった。
だがそれでも、
胸の鼓動がうるさいほど響いた。