振り返ったシルヴィアは、
目元を潤ませながら微笑む。
「エルヴィン様……このドレス……どうしたの……?」
エルヴィンが贈ってくれたドレスは
不思議なほどシルヴィアにフィットした。
そして肌触りがどこまでも優しい。
バイロンのドレスは見た目こそ人目を引くが、
お世辞にも着心地が良いとはいえなかった。
こんな素晴らしいドレスを仕立てた職人は
一体どこの誰なんだろう。
エルヴィンは照れたように目を逸らす。
しかし、次の瞬間、
真っ直ぐに彼女を見つめた。
「子どもの頃、祖母が刺繍を教えてくれた。ミシンを借りて、簡単な服を作るのが楽しくて……小さい頃の俺は洋裁に夢中になっていた。だけど、母に“侯爵家の嫡男のすることじゃない”と言われて……
全部、やめたんだ。」
シルヴィアは息を飲む。
この寡黙な男性が、
こんな秘密を抱えていたなんて。
「じゃあまさか、このドレスを作ってくれたのは……」
「バイロンの服を着せられてつらそうにしている君を見て……思ったんだ。
俺なら、君の身体を傷つけずにすむ服を作れるかもしないって。」
シルヴィアの胸の奥が熱くなる。
「君を“飾るため”のドレスじゃない。
君が息をしやすくて、歩きやすくて、
幸せになれる一着を……俺の手で作ってやりたい。」
シルヴィアは両手で口を覆い、
涙をこぼす。
「そんな……そんなふうに考えてくれていたの……?」
エルヴィンは照れくさそうに頷いた。
「亡命する前に、一着……どうしても作りたかった。
“誰のものでもない、君のドレス”を。シルヴィア。
もう二度と、君を“誰かの人形”になんてさせない。」
エルヴィンはなおも言葉を選ぶように、
ゆっくりと続ける。
目元を潤ませながら微笑む。
「エルヴィン様……このドレス……どうしたの……?」
エルヴィンが贈ってくれたドレスは
不思議なほどシルヴィアにフィットした。
そして肌触りがどこまでも優しい。
バイロンのドレスは見た目こそ人目を引くが、
お世辞にも着心地が良いとはいえなかった。
こんな素晴らしいドレスを仕立てた職人は
一体どこの誰なんだろう。
エルヴィンは照れたように目を逸らす。
しかし、次の瞬間、
真っ直ぐに彼女を見つめた。
「子どもの頃、祖母が刺繍を教えてくれた。ミシンを借りて、簡単な服を作るのが楽しくて……小さい頃の俺は洋裁に夢中になっていた。だけど、母に“侯爵家の嫡男のすることじゃない”と言われて……
全部、やめたんだ。」
シルヴィアは息を飲む。
この寡黙な男性が、
こんな秘密を抱えていたなんて。
「じゃあまさか、このドレスを作ってくれたのは……」
「バイロンの服を着せられてつらそうにしている君を見て……思ったんだ。
俺なら、君の身体を傷つけずにすむ服を作れるかもしないって。」
シルヴィアの胸の奥が熱くなる。
「君を“飾るため”のドレスじゃない。
君が息をしやすくて、歩きやすくて、
幸せになれる一着を……俺の手で作ってやりたい。」
シルヴィアは両手で口を覆い、
涙をこぼす。
「そんな……そんなふうに考えてくれていたの……?」
エルヴィンは照れくさそうに頷いた。
「亡命する前に、一着……どうしても作りたかった。
“誰のものでもない、君のドレス”を。シルヴィア。
もう二度と、君を“誰かの人形”になんてさせない。」
エルヴィンはなおも言葉を選ぶように、
ゆっくりと続ける。



