『ドレスに宿る誓い』―Elara & Lanois 王国を変えた仕立て屋たち―

そんな甘い雰囲気から一転、
突如黙り込んでしまったエルヴィン。
どうしたんだろうとシルヴィアが戸惑っていると、
「ちょっと待ってて」
と言い残し、
彼は書斎に消えた。

すぐに戻ってきたエルヴィンは、
震える指でひとつの箱を抱えていた。

「……シルヴィア。実は、君に渡したいものがある。」

「え……?」

差し出された箱は、
思いのほか大きかった。
シルヴィアは両手でそっと受け取ると、
緊張で胸が高鳴るのを感じながら蓋を開く。

――その瞬間、息を呑んだ。

「……まさか、これ……ドレス……?」

月光を受けて淡く輝く、純白の布。
余計な装飾を一切排した、
控えめで優しい曲線。
触れれば溶けてしまいそうなほど柔らかい生地。
見ただけで、
彼女の肌を傷つけないことが分かる。

「……着ても、いい……?」

震える声で尋ねると、
エルヴィンは一瞬目を伏せ、
すぐに頷いた。

「もちろん。君のためのものだから。」

シルヴィアは自室へ駆け込んだが――
すぐに気づいた。

(どうしよう。ひとりじゃ……着られない……)

戸惑いながら扉を開けると、
エルヴィンが心配そうに立っていた。