エルヴィンはクラウスにだけ
全てを打ち明けた。

「まずは王家の命令通り、派遣先の国へ向かう。
 革命が本格化した段階で職を辞任し、ウィステリア王国へ向かう。
 そこからは……国王ウィリアム陛下に頼るつもりだ」

クラウスは驚いたように目を見開いた。
「ウィリアム国王陛下が……本当に?」

「返事が来たんだ。
 “困難な時こそ、友に手を差し伸べる”
 ――そう書かれていた」

ウィリアム国王。
稀代の名君と名高い男。
エルヴィンがわずか一度の会談で、
心から尊敬した人物。

彼の治める国が、
彼らの「新しい人生の地」になる。

クラウスは深く頭を下げた。
「若奥様も……安心ですな」

エルヴィンの手が、無意識に震えた。
「……あぁ。シルヴィアもお前も、絶対に守る。どんなことがあっても」